徒然CURIOSISM

学びクリエイター朝森久弥とサークル「CURIOSIST」のブログです。

K談社を受けたが落ちた話

朝森久弥の中の人は、2015年4月に新卒として某所に就職しました。
ということは2014年春ごろに就活していたわけで、それはもう多くの企業・団体等の採用選考を受けていたのですが、
今回はその中でも印象深かった、K談社の選考を受けたときの話をします。


なお、私は三次面接で落ちました。

志望動機

月並みですが、K談社の出版物が大好きだったからです。週刊少年マンガ雑誌の中ではマガ○ンが一番好きですし、現代○書やブルーバ○クスも片っ端から読み漁っています。わが部屋にある本で一番冊数が多い版元はおそらくここでしょう。幼い頃から本の虫として育った私としては、人生にもっとも影響を与えている事業体といっても過言ではありません。もちろん、面接では他にも色々ペラペラ喋ってましたが、要するに憧れてたんですよね。……と、過去形のように書いてますが、今でもここの出す本は大好きです。
あと、歴史男さんの「或る新都作家の就活」を読んで、K談社の選考自体が面白いんじゃないかなと思ったのも大きいです。これを読んだのは学部3年の時で、その時はプレエントリーだけして選考に参加せず大学院に進んみました。が、せっかく回り巡って就活することになったのだから、今こそ受けてみようと思い立ったのです。ちなみに、私が受けた15卒の時は「入社時28歳未満」という年齢制限があり、博士課程3年になるこの時が最初で最後のチャンスでした。

K談社の選考状況

K談社は大変正直な企業で、少なくともここ数年は、公式サイトで過去の受験者数(選考段階別)を公開しています。参考までに、過去の採用サイトから漁った選考結果を表にまとめました。

受験者数 13卒 14卒 15卒 16卒
ES提出 4176 3937 3272 2789
ES選考通過 3088 2812 2706 2019
筆記試験通過(面接招集) 1074 1056 1077 987
一次面接通過 274 294 286 283
二次面接通過 74 90 85 81
三次面接通過 22 18 22 23
四次面接通過(内々定 17 16 20 20

※選考途中で辞退した受験者も含まれている。


K談社の選考は、
ES選考→筆記試験→一次面接→二次面接→三次面接→四次面接
の順で行われます。なお、三次面接と四次面接の間に総務面接というのがありますが、これは基本的にほぼ全通とのことです。

表を見ると、年々ES提出者が減っているのが分かります。出版不況と散々言われていますし、これからは紙よりデジタルだとか、色々な要因はあると思います。
一方、筆記試験通過以後の人数は毎年ほぼ固定化しているのが分かります。しかも面接に呼ばれる人数もかなり多い。面接にたどりつくまでなら、他の版元よりかなりチャンスが大きいのではないでしょうか。

会社説明会めいたもの

2014年1月24日参加。
K談社は例年、ES受付前に参加自由の説明会をやります。私の時は「仕事セミナー」という名目で開かれていました。
何日か日程が用意されていて、自分の聞きたい部署の社員さんが参加する日程に申し込みをしました。
1回の参加人数は100人が定員だったのですが、申し込むにあたってはこんな課題作文が課されました。

最近読んだ本(マンガ、雑誌をのぞく)のなかで面白かったものの書名をあげ、推薦の文章を書いてください。(全角400文字以内)

これを読んだ上で選抜していたのか、それとも抽選だったのかは謎です。
ちなみに私はこのとき、「夜の経済学」(扶桑社刊:荻上チキ・飯田泰之著)を薦めておきました。
「大学生男子の童貞率は、偏差値が1上がるごとに2%上がる」といったゲスい話が載ってる、割と真面目な本です。
仕事セミナーでは、学芸と文芸の部署の方の話を聞きました。
色々面白い話を聞いた後は課題を出されました。確か、その場で学芸書の企画案(タイトルと著者)を考えろというもの。ウケ狙いでゲッスい感じの企画案を出してみたら思いの外高評価で、選考参加へのモチベーションが高まりました。

ES(エントリーシート

2014年2月17日必着。
K談社のESはA4用紙4枚を手書き、しかもラスト1ページには自撮りの写真を貼れという、大変手間がかかることで悪名高いものです。
実際、プレエントリー、つまりK談社採用サイトのアカウントを取る人は1万人以上いるのに、ESを出すのは3000そこそこしかいません。
確かに新卒就活の中ではかなりボリュームが多い方でしょうがが、学振DCに比べればずっと楽だと思います。
ここで、実際に私がK談社のESで実際に書いた文章を抜粋してみます。

結構かっこよさげな事書いてる一方、「はじめの一歩新書」とかめっちゃあざといですね。


「確かな知を提供〜」は私がいつも言ってることですね。ただ、この文章だと(他の版元ではなく)K談社を推す理由が抽象的なものにとどまってます。まぁ最大手だし「もっとも多くの人に届けられる」は真実として押し通せると思いますが。あと、最後から2行目の「出版者」の誤字が痛い。でも普通に通りました。

筆記試験

2014年3月8日参加。
実はK談社17卒の筆記試験が今週末だそうです(ソースは「みん就」)。だからこのタイミングでこの記事書いたというのもあるんですが、上述の通り版元の中では最大規模の筆記試験ということで、あちこちで盛り上がります。ちなみに、K談社の筆記試験は例年集A社やS学館の選考日程と被るらしく、上手いことやらないとどちらか捨てざるを得なくなります。私は、そもそも集A社やS学館は年齢制限に引っかかっていてエントリーすらできませんでしたが。

私が受けたときは、西巣鴨にある大正大学で受験しました。服装は本当にどっちでもよくて、私は私服で行ったのですが、私服とスーツが半々だったと記憶しています。あと、さすが出版社だからか、女子受験者が多かったです。ほら、男性9割の企業とかたくさん受けてたからこれが大変新鮮で……。
筆記試験の内容はこんな感じでした。

前半(70分):就活にありがちな適性検査めいた業者テスト。計数・言語・英語のマークシート問題
後半(70分):オリジナル問題。一般常識5択クイズ60問・漢字10問書き取り・800字作文

K談社の筆記についてちょっと調べると、一般常識問題は「非常識」問題だとよく言われているようですが、私が受けたときはそこまでびっくりするほどではありませんでした。じゃあ解けたのかというと自信はありませんが。ほら、芸能系からっきしじゃないですか私。
当時流行っていた「永遠の○」にかこつけて、「0について述べた文として誤っているものはどれか。a.絶対零度とはマイナス273度のことである」みたいなひねった問題がちょこちょこ出ていました。
作文は「あなたが一番影響を受けた人物」というテーマ指定があり、私は高校の時好きだった女子のことを書きました。「当時、彼女を追っかけて高校進学し、その後振られてから一念発起勉強に励んだので今の自分がいる」みたいな筋立て。なかなか気持ち悪い純情ですよね。

一次面接

2014年3月29日参加。
私の記憶が正しければ、3月25日〜29日の中で好きな日程を選べました。ただし早い者勝ちで、しかも例によって集A社やS学館の選考日程と被ってくるので、筆記試験通過通知が来たら即座に選考予約を入れた方が賢明でしょう。
当日本社に行って受付を通りますが、その時チラっと見えた受験者名簿の学歴欄が見事にキレイになっており「すわ学歴フィルターか」と一瞬思いました。説明会の時は、実に様々な大学の人が来ていたのに。が、たぶんそんな面倒なことはやってなくて、筆記試験(+ES)の結果でスパッと切ったら自然にそうなったんだと思います。実際、あの筆記試験だとオリジナル問題ではあまり差がつかず、事実上、業者テストの出来で合否が分かれたんじゃないかなと思うのです。

受付を通ると控室に通されます。このとき、志望分野別に座らされるのですが、編集志望は「フィクション(コミック・文芸書とか)」「ノンフィクション(週刊誌・学芸書とか)」に分けられました。私は第一志望「学芸書」、第二志望「男性コミック誌」としていたので、ノンフィクションの方に。

面接の順番は、アカウントのID順でした。私は採用サイトがオープン直後にIDを取得したものだから、1万人以上いるプレエントリー者の中でも10番台。そんなわけで、この日集まっていた受験者のトップバッターでした。
面接ブースに連れていかれると、まずブースに座っている2人の面接官にESを渡します。いったんブースの外に出て5分ほど待機した後、面接官から呼び出しを受けたら面接スタートでした。
個人面接で、面接官は男性2人。年齢的に編集長・副編集長クラスだと思います。

面接時間は25分程度で、内容はまぁ割とオーソドックスでした。志望動機、研究内容、読んでる本の話など。
あぁ、「AKB49では吉永寛子推しです」と言ったら「アイドル好きなの?」と聞かれて「二次元なら」と即答しましたね。
あと、読んでる本のことを聞かれたときのために、スーツの上着ポケットにブルーバ○クスを1冊入れておきました。そして質問されたら、おもむろにスーツから物を取り出し語る。これが結構ウケが良くて、以後も続けてみることにしました。

二次面接

2014年4月8日参加。
ここからは先方に日時指定されました。あと、交通費が出るのもここからです。都内在住の私は2000円もらいました。金額だけ見れば、なかなか太っ腹だと思います。
同じ時間帯に35人ほど呼ばれていたようなのですが、受付を通ったら、名簿に「東京大学」が5人ズラッと並んでいるのを見てしまい「なにこれ怖い……」と恐れおののくことこの上なしでした。
面接の順番は、一次面接とは逆でアカウントのIDが大きい順でした。IDが圧倒的に若い私はラストバッターで、控室で2時間近く待たされました。

いよいよ面接ブースに呼ばれます。やはり個人面接で、面接官は男性3人。たぶんノンフィクション系の部長・編集長クラスだと思います。
面接時間は30分程度。内容は、1次面接より少し突っ込んだ感じで、たとえば……

・なぜ大学院で専攻分野を変えたのか?
・ブルーバ○クスでマンガにすると面白い企画は?
コミケによく出てたようだが、出版社と二次創作の関係はどうすべきか?
・週刊誌に配属されたとして、どこに取材したいか?

といった話を矢継ぎ早にしていました。
また、この時もスーツの上着ポケットにK談社の新書を仕込んでいたところ、面接官から「さっきから本が見えてるのが気になるんだけど、準備してきたんでしょ?」と言われて話題にする機会をもらえました。総体的に、雰囲気良く面接が終えられたと思います。

三次面接

2014年4月16日参加。
この日も日時指定で呼ばれました。交通の便を考えて午前中に関東の人を中心に呼んでいたらしく、この時集められていた16人の受験者のうち、少なくとも6人が早稲田大学の人でした。
面接の順番は再びID順で、私は最初に面接室に呼ばれました。一次面接・二次面接は、簡易的な仕切りで囲まれた「ブース」で面接したのですが、三次面接からは立派な「部屋」で行われました。
個人面接で、面接官は5人。役員・局長クラスの偉い人揃いですが、端の1人は若手で、人事部的な役割の人だと思われます。


面接は、一次・二次とは打って変わって威圧感が半端なかったです。
最初に「K談社に入ってやりたいこと」を聞かれたので答えたところ、いきなり
「君おしゃべりって言われるでしょ。人の話聞ける?」「早口だよねー」
「モテなさそうなの分かるわ」
とぶちかまされました。
「お、これが噂の圧迫面接か?」と思いつつ何とか切り返していくのですが、今までとは明らかにアウェーな雰囲気に飲まれてしまっている感は否めませんでした。ほかにも、

・ES見てると、ひとりで何かやることが多いようだが、仲間と共に何かした経験は?
・ESに小説が苦手と書いてあるが、実際に読んでるのか?
・君は自分で何でもできると思っているようだが、編集者は普通人間が求められる。そういう要素が自分にあると思うか?

など、極力こちらの弱みと思われることを突いてくることを意図した質問が多かったように思います。
この時も、スーツの上着ポケットにK談社の新書を入れておいたのですが、ついに出すことなく面接を終えてしまいました。


面接が終わった後は控室に戻り、OPQというマークシートの性格診断を解かされました。ただ、これはあまり重要視されてないらしく、控室にいる面々と駄弁りながらやってました。その時、他の4人の受験生と駄弁っていたのですが、うち1人は後にK談社に内定したことが分かっています。

終わりに

結局私は、三次面接の翌日に不採用通知をいただいてしまいました。
ただ、博士まで行って歳を重ねてるからと言って不利になるということはなさそうです。三次面接のあと、人事部のおじさんに書き終えたOPQの用紙を提出した折、「博士卒の人が最近入社してねぇ」と話してくださいました。後で調べると、確かに博士まで出てK談社に入った人が複数人いるようで、中には学振持ちだった人もいるようです。
ちなみに、K談社定期採用の年齢制限は、私が受けた翌年から「入社時30歳未満」に緩和されました。だから、実は私は今回までなら受験できたのですが……まぁ受けないですよね。


思うに、私はK談社に媚び過ぎだったのです。ESからしてそうでしたし、面接のときはスーツにK談社の本を入れて企業研究アピール。マンガについて聞かれたときのために、4月に出たK談社の男性コミック雑誌は全部買いました。あと、K談社全社員にSony Readerが配布されるというニュースを聞いてSony Readerも買いました。色々無理していたと思います。
また、総合出版とはいえ、雑誌が強い企業ですから、確率的には雑誌編集部に配属される可能性が高いでしょう。若手ならなおさらです。面接でもちょくちょく話題に上がった週刊○代を何度か買って読んだのですが、自分が編集しているビジョンが全く沸かなかったんですね。そら、シニア向けが売れるのは分かってるのですが……夜討ち朝駆けしてまでやれる仕事ではないと思ってしまいました。


K談社の不採用通知が来た直後、「やっぱり自分がやりたいことを貫かなきゃいけないな」と思い直し、その翌日に別のある企業の面接に挑みました。
その企業が、弊社です。
さすがに、弊社についてここで語るわけにもいかないので、詳しくは私とある程度仲良くなった後、face to faceでお尋ねください。
ぶっちゃけ、今の職場の方が自分には合ってるかなと、まだ1年ちょいしか働いてませんが、思っています。


追伸

ここまで赤裸々に書いておいてアレですが、もしここに書いたこと以上に突っ込んだ話を聞きたい方がいらっしゃれば、メールなどのクローズドな(不特定多数の目に入らない)手段でお願いします。