徒然CURIOSISM

同人サークル「CURIOSIST」主宰・朝森久弥の雑文の集合体です。

マイベストブック2018

去年に引き続き朝森久弥の「マイベストブック」、すなわち2018年に読んだ本のうち、私の人生に特に影響を及ぼした本を紹介するコーナーです。
以前の記事に書いたように、マンガ部門とマンガ以外部門に分けて発表します。

マンガ部門

Dr.STONE

私もこんなマンガが作りたかった。学べて楽しいド王道の少年マンガ
あーーーー先越された!このマンガを読む度にそう思います。
私はかつてK談社の新卒採用に応募してプレゼンしてきたくらい、学べるマンガに思い入れが強いのです(集A社は年齢制限で受けられなかった)。あるいは、もし絵が描けたらこういうマンガを描く道に進もうとしていたでしょう。描けないので学べる同人ゲームを作り続けているのですが。
けれども、よしんばどれだけ絵が上手く描けたとしても、私にこれだけの作品は作れなかったと思います。人類総石化からの、科学者による文明再興を目指すSFサバイバル。このコンセプトだけでも一応理系畑の私としては注目せざるを得ませんが、それだけではここまでのめり込むことは無かったでしょう。まず、主人公・千空がめっちゃカッコいいんですよね。白衣を身にまとった天才科学少年で合理的な思考を好む……というのはいかにもなキャラメイキングですが、そうでありながら情に厚い。人を助けずにはいられない。露悪的に振舞っているが、自分が大好きな科学を決して裏切らない。少年マンガの主人公以外の何者でもありませんね。加えて、千空は天才ではあるけれども彼だけで何をか達成できたことはほとんどなくて、むしろ科学とは縁遠そうなのも含めた仲間たちとの共闘があって初めて物事が進むのがとても好きです。Dr.STONEのテーマを一言で言えば『科学ってスゲー!』になるんでしょうが、個人的には『人間ってスゲー!』が本当の所じゃないかと思っています。
作中で千空らが現代文明にもつながる色々な物を作っていく様は、ここまで上手くいくかよと思いつつもきちんと監修が付いてる上少年マンガの勢いがあり説得力があります。これで興味を持ったら各自深掘りするでいいのです(危ないモノは上手にボカしてるのも良い)。あと、ジャンプの人気マンガなのに引き伸ばし感が全くなく、出し惜しみしない。極めつけは、作画担当のBoichi先生のクオリティの高さ。週刊連載もう一本抱えてるってマジ!?作中のどんな偉業よりも、奇跡的ではないでしょうか。
こんなの、真似できるわけがありません!

マンガ以外部門

りゅうおうのおしごと!

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

もはやロリラノベではない。熱き血潮たぎるガチンコ将棋バトルラノベ姉弟子は正義。
私も大人だから分かりますよ、この作品がまずロリを前面に押し出さねばならなかった背景は。実際、ヒロインがロリじゃなければここまで注目を浴びることもなかったでしょう。マンガというメディアが時として人に学ばせる力を持つのと同様に、ロリラノベもまた、ある層の現代人を引き付けるには鉄板のフォーマットなのです。
そうは言っても、何でもロリにすればいいわけではありません。数多のロリコンテンツと比較して『りゅうおうのおしごと!』が傑出している点は、ロリに必然性があることです。何せ将棋と言うのは、幼い時に大人顔負けの才能を発揮するのが当たり前の世界。主人公の九頭竜八一は高校生でタイトル戦に挑戦しますし、メインヒロインの雛鶴あいは10歳で女流棋士(プロ)になりますが、どれも現実の将棋界ではよくあることです。荒唐無稽さがほとんどない。何なら現実の将棋界の方がよっぽど破天荒なくらい。これほどロリコンテンツに適した題材はなかなか見つけられないのではないでしょうか。
本作は、若くしてプロ棋士として活躍する主人公・八一の活躍を綴るのが本筋ですが、他のキャラがそれぞれ主人公を張れるくらいの魅力と熱量を携えています。将棋という、ある意味ではゲームのひとつ、あるいはスポーツのひとつでありながら、文字通り人生を賭ける人々。将棋で人生を賭けるといえばやはり奨励会で、奨励会での仁義なき闘いを綴った作品は多数あります。『りゅうおうのおしごと!』にももちろん奨励会の話は出てくるんですが、そうでない場面でも次々と、人生を賭けた戦いが勃発するんですね。あぁ、この人たちは将棋によって自己の存在証明をしないと生きていかれないんだということが、たとえ作中の将棋場面の話があまりよく分からなくてもひしひしと伝わってきます。一方で将棋ファンが読めばきちんと分かるようなネタがそこかしこにちりばめられている。棋士サイドの協力も積極的と聞きますが、作者が将棋を愛し、深い敬意を持って物語を紡いでいるからこそ成立する作品でしょう。
ロリラノベのテンプレ的には、主人公の正妻は雛鶴あいになるはずですが、私は姉弟子こと空銀子こそが八一の真のヒロインだと思っています。女流棋士相手では敵なしなのに、男性棋士に交じればそこそこでしかない(これもまた現実そっくりだから将棋界怖い)。女性初のプロになれたとしても、八一らトップクラスにいる棋士には到底及ばないことが運命づけられている。それでも、八一の傍にいたい一心で血みどろになって指し続ける。どいつもこいつも将棋バカな本作キャラの中でも、銀子の将棋しかない感は異常です。世界一切ない恋ですよ。本当に、報われてほしい……。

ノミネート作品一覧

マイベストブック2018のノミネート作品は以下の通りでした。
(並び順が順位を表すわけではありません)


【マンガ部門】
Dr.STONE集英社
ヒナまつりKADOKAWA
重版出来!小学館
・ランウェイで笑って(講談社
・二月の勝者(小学館


【マンガ以外部門】
りゅうおうのおしごと!SBクリエイティブ
・いみちぇん!(KADOKAWA
・人が病気で死ぬワケを考えてみた(主婦と生活社
・AI vs. 教科書が読めない子どもたち(東洋経済新報社
・本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること―沖縄・米軍基地観光ガイド(書籍情報社)


去年は意外とラブコメ少なかったですね。
年老いてきたからなのか、熱い気持ちになれる本を欲している傾向があるかもしれません。
重版出来!』は出版社が舞台のお仕事マンガですが、一見地味そうに見える仕事にもどんどんスポットライトを当て、カタルシスを生み出していくのが面白いです。
『二月の勝者』のテーマは中学受験。これは教育クラスタに首を突っ込んでいると否が応でも熱気が伝わってくるテーマで、ついに取り上げてくれたかという思いです。まだ3巻なので続きに期待。
『いみちぇん』は角川つばさ文庫のいわゆる児童書。漢字を書き換えて戦うという発想が秀逸。というか、ググってもらうと分かりますが、最近の児童書は絵柄がかなり“今風”で、こんな絵だったら私も小さい頃からもっと児童書読んでいたのになと思いました。
『人が病気で死ぬワケを考えてみた』はコミックエッセイとも言えなくもないですが、マンガ以外に分類。現役医師かつ漫画家のねじ子氏がタイトル通りのことを図解で分かりやすく説明してくれています。結局、死からは逃れられないんだなぁと寂しく思いつつも、気が晴れやかにもなる不思議な読後感でした。


今年も素晴らしい本に出会えますように。