徒然CURIOSISM

学びクリエイター朝森久弥とサークル「CURIOSIST」のブログです。

マイベストブック2022

年々発表が遅くなっていることに定評のある朝森久弥の「マイベストブック」です。この記事では、昨年2022年の1年間に読んだ本のうち、私の人生にとくに影響を及ぼした本を紹介します。
マンガ部門とマンガ以外部門に分けて発表します。

 

マンガ部門

【推しの子】

推す幸せを噛みしめて!

【推しの子】の原作担当である赤坂アカは、マイベストブック2017マンガ部門を受賞した『かぐや様は告らせたい』の著者でもあり、私にとってまさに推しのマンガ家です。【推しの子】の序盤の物語展開はすぐには打ち切られないことを前提にしたもので、『かぐ告』で培った地位を遺憾なく発揮しているなと感じました。作画担当の横槍メンゴは、ビターな純愛マンガ『クズの本懐』から追いかけてきましたが、なるほど赤坂アカと組ませるとは集英社の編集者も粋なことをするなぁと思ったものです。

そんな2人が組んだマンガなので物語が一筋縄ではいかないのは織り込み済みで、とくにヒロインのこじらせ具合が良くも悪くも注目される作品です。私は有馬かなの存在を知って全巻購入を決めました。はい、こってりしたオタですね。どんなキャラを出したら人気が取れるのか、すごく計算して描かれているはずです。

芸能界が舞台ということで、芸能界の裏事情が学べる風のマンガにもなっています。もちろんきちんと取材して描いているのは確かでしょうが、実はその信憑性はこの作品を推す上での重要ポイントではないんですよね。では何が推しポイントかというと、登場キャラひとりひとりのエゴです。アクアやルビーといったメインキャラクターだけでなく、サブキャラクター、一度きりのキャラにもスポットライトを当て、そのキャラなりのもがきを描いている。結果がいつもベストとは限らないけれど、みんな自分の置かれたポジションで最善を尽くしている。その姿が描かれているからこそ、新しいキャラが出てくるたびに「推せる!」となるのではないかと感じています。

私も30代半ばになったからか、全体として大人のキャラに共感することが多いのですが、高校生(初登場時)俳優の鳴嶋メルトの成長ぶりをほほえましく見ています。少年少女成長譚からしか摂取できない栄養がありますよね。再登場を期待しています。

 

マンガ以外部門

TOEIC(R) L&Rテスト 究極の模試600問+

宇宙を目指す私の道標になった!

2022年に受験した、JAXA宇宙飛行士候補者選抜の英語試験対策として入手しました。『宇宙飛行士という仕事』(柳川孝二)によれば、2008年に実施された前回の選抜では、書類選抜と並行してTOEIC試験で英語力を測り、70%程度(990点満点で約700点)の得点を要求したという記述があったからです。TOEICは学部生のときに数回受けたきりで、短期間で得点力を高めるには模試を繰り返すのがベストだと考え、3回分の模試が入っているこの本を選びました。

2022年2月6日、英語試験の約3ヶ月前にこの本についている1回目の模試を解いところ、640点という低スコアを記録。このままでは不合格は必至です。私は危機感を募らせ、試験まで英語漬けの生活を送ることを決心しました。他にもいくつかの英語教材に取り組みましたが、結局一番時間を割いたのがこの本でした。著者のヒロ前田先生が提唱する「3回チャレンジ法プラス」を愚直に実践したところ、3回の模試を使いつぶすのに100時間はかかったからです。

正直なところ、この本を解いている最中は得点力アップをあまり自覚できていなかったのですが、英語試験の5日前に『公式TOEIC Listening&Reading問題集8』を解いたら、参考スコアの範囲は720-860点を記録。中央値では790点となりました。もっと高得点を取れる受験者も大勢いたでしょうが、この時初めて「英語試験を通過できるかも」という手ごたえを感じました。当日の英語試験ではSpeakingとWritingもあり、それはそれで大変でしたが、私の英語試験通過に最も寄与したのはこの本だったと確信しています。

TOEIC学習をある程度積み重ねると、英語のニュースや文献を読んだり聞いたりすることに抵抗感が薄れました。すると「英語から遠ざかってきたばかりに、これほどの有益な情報を知らずに過ごしてきたのか」という気持ちが募ってきたのです。今後は宇宙飛行士を目指すかどうかにかかわらず、英語での情報収集・発信に積極的に取り組みたい。そんな思いを起こさせてくれた本でもありました。

 

ノミネート作品

マイベストブック2022のノミネート作品は以下の通りでした。
(並び順は五十音順であり、順位ではありません)

 

【マンガ部門】

・ウィッチウォッチ(集英社

・【推しの子】(集英社

・ガクサン(講談社

・タコピーの原罪(集英社

・チ。―地球の運動について―(小学館

 

【マンガ以外部門】

・宇宙飛行士という仕事(中央公論新社

・「大学入試学」の誕生(金子書房)

TOEIC(R) L&Rテスト 究極の模試600問+(アルク

・なんとな~く物理(永岡書店)

メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界(技術評論社

 

『ウィッチウォッチ』は真桑先生と嬉野さんのエピソードが解像度高すぎて、もはや同人活動史書としての価値があるとすら思います。『タコピーの原罪』はしずまりも良きですけど、個人的には東くんが救われたのがよかったです。

『「大学入試学」の誕生』は、昨今の大学入試改革(騒動)への対応で脚光を浴びた倉元先生らの本で、今後この分野が興隆してほしい、というか興隆させなければと強く思いました。『メタバース進化論』はバーチャル美少女ねむさんによるメタバース案内書、という体裁の思想書です。50年後くらいに高校の倫理の教科書に載るかもしれませんね。

 

今年も素晴らしい本に出会えますように。