今年も朝森久弥の「マイベストブック」の時期がやってきました。この記事では、昨年2025年の1年間に読んだ本のうち、私の人生にとくに影響を及ぼした本を紹介します。
マンガ部門とマンガ以外部門に分けて発表します。
マンガ部門
メダリスト
この世界にモブなんていない!
『メダリスト』の連載が始まったのは2020年ですが、私が本作を知ったのはテレビアニメ化した2025年の冬でした。令和のスポ根マンガのスタンダードと言っても過言ではなく、少年マンガ大好きな私が求めていたアツさがここにあります。
本作には美少女フィギュアスケート選手がいっぱい登場しますが、決して美少女のカワイイを前面に押し出した作品ではありません。読んでいて一番強く抱くのは「みんながんばっていて偉い!」という保護者目線の気持ち。実際、私に11歳(主人公の結束いのり初登場時)の子どもがいてもおかしくない年齢ですしね。選手を導くコーチたちが挙って真摯で「ありがとう…」という気持ちになっています。
本作の軸は、フィギュアスケートでオリンピック金メダルを目指す少女・結束いのりと、そのコーチである明浦路司のサクセスストーリーです(なお、作者が2人に課す試練はだいぶ重ため)。そこに宿命のライバル・狼嵜光とオリンピック金メダリストの夜鷹純が立ちはだかり……というのは王道展開なんですが、ほかに出てくる選手やコーチたちの描写がとても濃い。「悩み苦しみながらも努力して、いまこの場に現れてきているんだな」と感じずにはいられないんです。どのキャラも主人公が張れるんじゃないでしょうか。とくに、光に追い抜かれても挑戦を諦めない八木夕凪、誰よりもカッコいいを貫く岡崎いるか、大いなる野望を秘めたライリー・フォックス先生の背景には鬼気迫るものがあり、スピンオフがあったらぜひ読みたいです。
本作のアニメ化にあたっては、あの米津玄師が原作に感銘を受けて主題歌制作を逆オファーしたという逸話があります。結果として本作には情熱ある才能が結集し、アニメは2期も放映され、劇場版公開が決定するなど日に日に盛り上がりを見せています。元をたどれば本作自体が、作者であるつるまいかだ先生のほとばしる情熱を具現化したサクセスストーリーそのものなんですよね。私もいちクリエイターとして、どうせやるならつるま先生のように創作するんだ!という勇気をもらえた作品です。
マンガ以外部門
男性の繊細で気高くてやさしい「お気持ち」を傷つけずに女性がひっそりと成功する方法
男性中心の「職場あるある」を笑い飛ばそう!
本書は、2018年に米国で発行されたサラ・クーパーの著書「How to Be Successful Without Hurting Men's Feelings」の日本語翻訳版です。表向きは「女性がキャリアを成功させるためのハウツー本」なのですが、タイトルにも表れているように、男性中心の職場で女性がいかにサバイブするかを皮肉たっぷり語ることで、そんな職場のバカバカしさを暴露する本になっています。
- 男性が泣くのは「感性が豊か」だが、女性が泣くのは「ヒステリー」なので要注意。
- 男性のミスを女性が指摘すると「怖い女」と言われます。
- 男性投資家を満足させるため、わざとマンスプレイニング(上から目線の説教)の機会を与えよう。
……などなど。
米国の超大手IT企業で働いていたサラ・クーパーは、本書でテック業界の「多様性」についても取り上げているのですが、その清々しいまでのボーイズクラブっぷりに、笑ってはいけないと思いつつも笑ってしまいました。
本書はいわゆるZ世代にはあまり刺さらなさそう(と思いたい)ですが、それ以上の世代で働いている女性には共感することが多々あると思います。また、本書の原書のAmazonページで、イギリスやインド、フランス、メキシコなどのレビュアーが「わかる~!」とレビューしているのを見つけて、どこの国でもそうなんだな...…と切なくも感心しました。あと、私は成り行きで女性ばかり・男性ばかり・男女半々の職場(的なコミュニティ)にそれぞれ所属してきたのですが、その経験から言うと、男性中心の「職場あるある」に違和感をもつ男性は割といて、そういう男性にも本書は響くところがあるんじゃないかなと思います。
本書を読んだからと言って、すぐに成功につながることはないかもしれません。でも、そもそも男性の「お気持ち」なんて気にし過ぎても仕方がないのだから、もっと好きに生きていいんだ!と前向きな気持ちになれる一冊でした。
ノミネート作品
マイベストブック2025のノミネート作品は以下の通りでした。
(並び順は五十音順であり、順位ではありません)
マンガ部門
マンガ以外部門
- 〈高卒当然社会〉の戦後史 誰でも高校に通える社会は維持できるのか(新曜社)
- 男性の繊細で気高くてやさしい「お気持ち」を傷つけずに女性がひっそりと成功する方法(亜紀書房)
- 中国共産党 世界最強の組織 1億党員の入党・教育から活動まで(星海社)
- 裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち(太田出版)
- ルポ アフリカに進出する日本の新宗教 増補新版(筑摩書房)
『上杉くんは女の子をやめたい』はTSモノでやぶうち優先生節が遺憾なく発揮されていますが、真骨頂はのえるや瑛人の特大感情にこそあると思います。『サンキューピッチ』は読者の裏の裏をかき続けることに定評がある野球マンガですが、大事なところは王道展開を繰り広げてくれるのがズルいです。
『中国共産党~』は、組織論として考えると民主主義国家に住む人にも大いに役立つ本と言えるのではないでしょうか。日本でこの本が読めることに感謝です。『ルポ アフリカに~』もこの著者でないと書けない本でした。思えば日本にも"新宗教"だったキリスト教が布教されてそれなりの時間が経つわけで、国を超えた人の交わりというのは人が人である限り止めようがないものなのでしょうね。
今年も素晴らしい本に出会えますように。