去年よりは早く書く!毎年恒例の朝森久弥の「マイベストブック」です。この記事では、昨年2024年の1年間に読んだ本のうち、私の人生にとくに影響を及ぼした本を紹介します。
マンガ部門とマンガ以外部門に分けて発表します。
マンガ部門
チ。―地球の運動について―
受け継がれるガチ勢の狂気!
天動説が信じられていた15世紀のヨーロッパを舞台に、地動説に命を懸けた人々の物語。作中では地動説に魅入られた人々が徹底的に弾圧されます。地動説を知る現代の私たちとて、もし作中世界で生きていれば、わざわざ地動説に触れようとしない人が多数でしょう。15世紀でも現代でも、その時の世間に迎合して生きるのが大衆の常。それでも、世間で白い目で見られることに熱狂せずにいられない人は確かにいる。迫害まではされなくても「それやって何になるの」ということに夢中になってしまう人は結構いると思うのです。彼らの人生は不正解だったかもしれないけど、無意味ではない。そういう“ガチ勢”の危うさとカッコよさを現代の大衆に見せつけたのが、このマンガの最大の魅力と言えるでしょう。
しかも、作中では地動説研究が奇跡的にも見知らぬ誰かに引き継がれていく。“ガチ勢”の熱気にあてられた人が次の“ガチ勢”になっていくのです。その鍵になるのは文字でした。作中の地動説“ガチ勢”のひとり、ヨレンタは「文字は、まるで奇跡」と言いましたが、キャラクターたちが遺した文字が時間と場所を超越して誰かの心を揺さぶり、未来を変えていく。一人ひとりの力は非力でも、これがあるから人類は強くなれるんですよね。非力な物書きの私も勇気づけられました。
ところで、このマンガに登場するノヴァクは屈指の悪役ですが、実は多くの読者にとってもっとも身近なキャラクターではないでしょうか。与えられた仕事をきちんとこなし、社会の秩序を重んじて家族を大切にする。もちろん、ノヴァクの仕事は残忍ですし作中でも褒められることではなかった。ただ、ノヴァクの娘を想う気持ちは本物だと思いますし、彼の人生もまた無意味ではなかったと思いたいのです。
マンガ以外部門
ニューエクスプレス エスペラント語(CD付)
世界中の人々とつながる道しるべ!
国際語であり人工言語であるエスペラントに以前から興味を持っていたものの、なかなか手を出せずじまいでいたところ、学習アプリDuolingoをきっかけに学ぶようになったのが2024年1月のことでした。それから今日までほぼ毎日Duolingoでエスペラントに触れています。11月にはエスペラント学力検定試験4級を受け、合格しました。そういう意味では2024年の1年間で私の人生にとくに影響を及ぼしたアプリとしては間違いなくDuolingoなのですが、この記事はあくまで「マイベストブック」なので、本の話をします。
Duolingoにはエスペラントを日本語で学ぶコースがないので、英語で学ぶコースを選んでいるのですが、それもあって単語はともかく文法事項がなかなか身に付かない。そこで手に取ったのが本書です。Duolingoでよく分からないことが出たときに参照する本として使っています。いざ参照すると目に付くのは「例外はありません」のオンパレード。実際、エスペラントは人称変化や不規則動詞がないのですが、エスペラントがいかにシステマチックで学びやすい言語なのかを随所でアピールしています。高校生のときにフランス語で挫折した私にはこの点が嬉しかったです。
本書は日本語話者がエスペラントを学ぶことを前提にした本ですが、中学校レベルの英語で学ぶ文法用語が多く出てくるので、「英語だったらこうかな?」と比較しながら学ぶと捗るかもしれません(エスペラントは語順に寛容ですが英語チックにすると理解しやすい)。あと、発音は大学の第2外国語で学んだスペイン語のように“ローマ字読み”で大体OKだし、フランス語由来と思われる単語も出てくるしで、今までの私の言語学習が活かされているなと実感します。
惜しむらくは、エスペラントを実生活で使う機会があまり多くないことです。英語帝国主義を憂う私としてはもっと世界中の人がエスペラントを使う場が増えてほしいですが…。「ないなら作ればいい」がクリエイター精神ということで、エスペラントを使ったゲームを作りたい。そう思わせてくれる一冊でした。
ノミネート作品
マイベストブック2024のノミネート作品は以下の通りでした。
(並び順は五十音順であり、順位ではありません)
マンガ部門
- アンナ・コムネナ(星海社)
- うちの子は字が書けない 発達性読み書き障害の息子がいます(ポプラ社)
- FX戦士くるみちゃん(KADOKAWA)
- チ。―地球の運動について―(小学館)
- モノクロのふたり(集英社)
マンガ以外部門
- NPOカタリバがみんなと作った 不登校―親子のための教科書(ダイヤモンド社)
- ニューエクスプレス エスペラント語(CD付)(白水社)
- VTuber学(岩波書店)
- 日本化粧品検定 2級・3級対策テキスト コスメの教科書(主婦の友社)
- ふたごチャレンジ! 「フツウ」なんかブッとばせ!!(KADOKAWA)
『アンナ・コムネナ』は、アンナの自己“皇帝”感が半端ない。900年前に生きた人の遺した言葉が現代人を勇気づけるさまは、まさに文字は奇跡だと思わずにはいられません。『うちの子は字が書けない~』は、いわゆるディスレクシアの入門書として最適。保護者や先生など周りの大人も試行錯誤していかないといけないことを強く自覚しました。
『日本化粧品検定~』は2級受験時にお世話になりました。化粧品って化学要素が結構強いんですが、いわゆる文系の人にも読みやすいと思います。『ふたごチャレンジ!~』はエンタメ小説たる児童書として出たことに大きな価値があると思います。幼いころ「女らしさ・男らしさ」で悩んでいた私は、この本が読める今の子が羨ましい。
今年も素晴らしい本に出会えますように。